立体駐車場に入り、荷物も乗せられる車といえば、ステーションワゴンが候補として挙げられますが、さらにデザイン性を向上させた4ドアクーペ。これはうまく選ぶと機械式立体駐車場に収まり、大人4人が快適に乗車でき、かつ荷物もたくさん乗せられます。今回はその中でも高い走行性能や高級感も得られるオススメ車種を2つ紹介させていただきます。以前にも「デザインと実用性」の観点から4ドアクーペについてはこちらで触れていますが、今回は機械式立体駐車場に収まる、という観点からも取り上げさせていただきました。
Ⅰ.スポーティーなデザインと走行性能を併せ持つ「BMW 4シリーズ グランクーペ(F36型)」

BMW3シリーズをベースとしたクーペスタイルの”4シリーズ”。その中でもセダン同様の乗降性と、ステーションワゴンに近いラゲッジを持つ「グランクーペ」。まさに”いいとこ取り”をしたような形ですが、中古車市場だと超が付くほどお買い得です。
F型(2014〜2021年)モデルだと、走行10万キロ以下で絞っても、乗り出し100万円を切るものも珍しくありません。グレードは多く存在しますが、エンジン特性で大きく区分すると、①直列4気筒2Lターボ、②同じく直列4気筒2Lターボの強化版、③直列6気筒3Lターボの3パターンで、それぞれに「スポーツ」、「ラグジュアリー」、「Mスポーツ」があります。今回は中古車市場で特に値が下がっている前期モデルでグレードごとの比較をしてみました。
①でも街中では充分な走行性能がありますが、②の場合はかなりキビキビした走りになり、燃費などは①とさほど変わらない高性能エンジンです。③に至っては、最高出力306馬力、最大トルクは僅か1,200回転で発生させ、400N•mを誇ります。アイドリングからほんの僅かアクセルペダルに足を乗せた程度で、自然吸気エンジン4L相当の最大トルクを発生させる訳ですから、運転も非常に楽で、同乗者も心地よく乗車できます。ターボエンジンではあるものの直列6気筒のエンジンから、BMWの代名詞である「シルキーシックス」を感じることもでき、満足度の高い一台となります。
また、①②の2Lエンジンも低回転トルクを充実させることにより、通常の走行では充分過ぎるほどの性能を持ち合わせています。特に②については、1250回転で35.0N•mを発揮するため、NAエンジン3〜4L程のトルクを持っていることになります。
ひとつ注意点を挙げるとすれば、①②のエンジンは高額な修理に繋がるトラブルが多く報告されているようです。その正体は輸入車に良くある「オイル漏れ」だけではなく、「タイミングチェーンのガイドパーツの破損」から起こる故障があるからです。エンジン内のパーツにプラスチックのような樹脂パーツが使われていることによります。エンジン内の熱や経年劣化で破損することが多く、大きな故障に繋がってしまうのです。
実際の確率がどれくらいかは分かりませんが、この理由による故障の場合は修理代が100万円前後になることが多く、このまま乗るのはあまりにもリスクが高いでしょう。一方で、ここまで症状が明確になっていることから、対策品というのも存在しています。タイミングチェーンガイドパーツのみならず、その周辺部品もひとまとめにして20万円前後で部品が出ています。工賃を含めると30万円前後を見込まなければなりませんが、車両が安く手に入るならその分を上乗せして購入すると考えるのもアリですね。
【4シリーズグランクーペ(F36型 前期2014〜2017年)の大まかなスペック】

ラゲッジスペースについて
| 状態 | 容量 |
|---|---|
| 後席使用時 | 480L |
| 後席格納時 | 約1,300L |
| リヤシート | 40:20:40分割可倒式 |
| 開口部 | ハッチバック式 |
4シリーズグランクーペはセダンと違って5ドアのハッチバックなので、トランク容量そのものはセダンと大きく変わらなくても、開口部が大きく、背の高い荷物を積みやすいのが特徴です。
480Lという数字以上に便利
例えば、
- 大型スーツケース
- キャリーケース2~3個
- ボストンバッグ
- ゴルフバッグ
- 買い物袋
- 旅行用品
などはかなり載せやすく、特に旅行では、ハッチバックの大きな開口部がかなり便利です。
後席を倒すとかなり広い
後席は40:20:40で分割されているので、例えば中央だけ倒せば、4人乗車+長尺物という使い方ができます。スキー板や長い荷物などを積むときに便利です。全部倒すと約1,300Lまで拡大します。
ゴルフバッグは?
ゴルフバッグ2本は十分狙えます。
ただし、「2本をそのまま横に並べてポン」というような積み方ではなく、バッグを斜めに配置するなど工夫すれば2本+αという使い方ができます。3人+ゴルフバッグ3本、現実的にはこれがMAXかと思われます。後席のセパレートを倒し、うまく重ねると3本+バッグは充分に積み込めます。ゴルフバッグの形状によって、後席の倒し具合は変わってくると思いますが、概ね1座席分でいけるでしょう。
F36のラゲッジで気になる点
① 開口部は広いが、ルーフが低い
クーペデザインなので当然ですが、SUVほど高さ方向の余裕はありません。大型のスーツケースを立てて入れるような場合は、サイズ確認が必要です。
② 後席を倒しても完全なフラットではない
後席を倒すと荷室はかなり広がりますが、SUVやワゴンのような完全フラットな床ではありません。少し傾斜になるのと、シート背もたれの下部に、シートベルトのバックル等の跡が残りがちです。この辺りに神経質な方は、クッションを挟むなどすることをオススメします。
ただ、F36の最大の魅力はここ
「見た目はクーペなのに、実用性はハッチバック」です。例えば、435i M Sportを買って、
平日は普通に通勤
↓
週末はワインディング
↓
旅行ではスーツケース
↓
ゴルフではバッグ2本
という使い方ができます。しかも全幅約1,825mmなので、機械式駐車場の幅1,850mm制限にも収まりやすいサイズです。個人的には、F36は「BMWで実用性を確保しながら、セダンよりスタイルを優先したい人」にはかなり優秀なボディだと思います。
Ⅱ.圧倒的なパワーと走行安定性を誇る「アウディ S5スポーツバック(初代 8T)」
初代S5 Sportbackの大きなポイントは、3.0 TFSIスーパーチャージャー+7速Sトロニック+quattroという組み合わせです。2012年型の評価でも、S5はスポーツカーというより「運動性能の高いGT」と位置づけられています。
初代S5 Sportback後期の魅力を一言で表すなら、
「ものすごく速いのに、スポーツカーっぽく振る舞いすぎない」
というところです。333ps・440Nmの3.0L V6スーパーチャージャーを積んでいるのに、乗った感じは「尖ったスポーツカー」ではなく、非常に質の高い高速GT。そして、この性格がスタイリングにもそのまま表れています。**S5は「速そうに見せる」のではなく、「美しいボディの中身が実はかなり凄い」**という車です。
走行性能
まずエンジンが非常に面白いです。S5の心臓部は、3.0 TFSI V6スーパーチャージャーで、
- 333ps/440Nm
- 7速Sトロニック
- quattro
という組み合わせ。ここで重要なのは、ターボではなくスーパーチャージャーであることです。
アクセルに対する反応が非常に自然
ターボ車の場合、
アクセルを踏む→排気が増える→タービンが回る→ブーストが立ち上がる→グッと加速
という過程があります。もちろん現代のターボはほとんどターボラグを感じませんが、それでもフィーリングとしては多少「溜め」があります。
S5の3.0 TFSIはそれとは違って、アクセルを踏む→ すぐにトルクが出る→ 車がグッと前へ出るという感じで、「低回転トルクで走る気持ちよさ」とかなり相性がいいです。
440Nmがかなり太い
「乗り味」で言うとS5の440Nmは、「最高出力333ps」以上に重要です。たとえば、30〜50km/hくらいで流していると気に、アクセルを少し踏んだとき、即時に「グッ」と前に出ます。
さらに踏み込むと、「グググッ……」と速度が一気に乗ってくる、このトルクの厚みがS5の大きな魅力です。
435iとの比較
435iもN55の3.0L直6ターボで、400Nmあります。こちらも低回転から非常に力があり、実際、435iは1,200rpm付近から最大トルクを使えるため、街中でも非常に扱いやすいエンジンです。
なので、「S5だけが低速トルク型」というわけではありません。むしろ1,200rpmでのトルクは435iの方が太いことが想定されるのですが、違うのはトルクの質です。
S5→ドンッと厚いトルクで車体を押し出す
435i→滑らかな直6がスーッと回りながら加速する
という印象です。
S5は「エンジンを回さなくても速い」
これがS5の面白いところです。普通、333ps級の車というと、回して速いというイメージがありまが、S5は違います。低~中回転から十分速い。だから、”飛ばすぞ”と構えなくても速く、高速道路なら、80km/h → 100km/h程度の追い越しでさえ、アクセルを少し踏むだけで済みます。この「余裕」がS5のGTらしさです。
Sトロニック
ここは個人的にS5のかなり大きな魅力だと思います。7速Sトロニックはデュアルクラッチ式です。このミッションは、普通のトルコンATとは違って、「次のギアがすでに準備されている」ような構造です。フォルクスワーゲンのDSGと同じです。こちらは
そのため、という変速が非常に速く、特にスポーツモードやパドル操作では、「エンジンとタイヤが直接つながっている」ような感覚があります。
これは435iのZF 8速ATとの大きな違いです。435iの8ATはものすごく優秀ですが、基本的には、「滑らかで賢いAT」であるのに対し、S5のSトロニックは、「機械的でダイレクトなDCT」という魅力があります。
quattroがS5のキャラクターを決めている
S5=quattroです。アクセルを踏んだとき、後輪+前輪路面を掴みます(基本のトルク配分は前輪40:後輪60)。そのため、333ps/440Nmをかなり安心して使えます。特に、
- 雨
- 高速道路
- 山道の上り
- 路面の荒れたところ
- 冬場
などで安心感が高く「速いけど怖くない」車です。安心して速く走れる車です。
Sコーナーに入っても、
スッと向きを変える
→ 4輪が路面を掴む
→ アクセルを踏む
→ グイッと脱出
という感じです。ただし、車重があるので、
「軽快!」
という感じではありません。
S5についても、ボディロールは少なく、quattroによって高い安心感を得られる一方、重量感があり「athletic grand tourer」と評されています。
高速道路がものすごくいい
例えば、大阪→東京のような長距離にもS5は非常に向いています。・車体が安定している。・直進性が高い。・quattroで路面を掴む。・3.0Lなので余裕がある。・7速なので巡航もできる。
そして何より、100km/hから踏んだときの余裕が凄い。「速く走っている」というより、「速度域が上がっても車が全然苦しそうじゃない」という感覚。これがS5のGTとしての魅力です。
乗り心地も「スポーツカーとしてはかなり良い」
S5はスポーツモデルなので硬さはあります。ただし、性格としては、ガチガチのスポーツカーではありません。むしろ、高速道路では非常に落ち着いているタイプ。
ただ、19インチになるとタイヤの薄さから路面の衝撃を拾いやすくなります。実際、試乗評価でも19インチは段差などのショックをキャビンに伝えるものの、極端にハーシュではないとされています。
スタイリング
ここがS5のもう一つの本領、走り以上にS5を特徴づけているのが、デザインです。
初代A5/S5のデザインは、現在見てもかなり完成度が高いと思います。特にS5 Sportbackは、
「セダン」でもない
「クーペ」でもない
「ハッチバック」でもない
独特の存在感があります。横から見ると本当に美しくS5 Sportbackの一番の魅力だと思っています。
フロントから、
低いボンネット→Aピラー→滑らかに下がるルーフ→短くてワイドなリア+4本出しマフラー
Sportbackなので、リアウインドウからハッチまで一気に流れる。この形がS5の個性です。このラインが非常に綺麗。しかも4ドア。つまり、「クーペのスタイリング」と「4ドアハッチバックの実用性」を両立しています。
435i Gran Coupeとのデザイン比較
ここは非常に面白いところです。435i GCも当然かなり格好いいです。F36は低くワイドで、BMWらしいFRのプロポーションを持っています。レビューでも、低い車高とワイドなスタンス、流麗なルーフラインが大きな魅力として評価されています。
個人的な印象で表すと、435i GCは「スポーツカーっぽい美しさ」S5は「エレガントな美しさ」だと思います。「S5」というエンブレムの見せ方も、AMGやMほど派手ではありません。
ここが重要で例えば、
「俺は速いぞ!」
というデザインではなく、普通に見れば、「ちょっと格好いいAudi」なんです。
でも、
- シルバーミラー
- S5エンブレム
- 専用グリル
- 4本出し
などを見ると、
「あ、これS5だ」
と分かる、この控えめな高性能感が、この年代のAudiの魅力だと思います。
435i GCは逆に「FRらしい姿勢」が格好いい。435iの良さは、ロングノーズ+後ろ寄りのキャビンです。つまり、「この車は後輪で走っています」というデザイン。しかもF36はリアフェンダー周辺の張り出しがあり、低くワイドに見えます。BMWのデザイン資料・試乗評価でも、4シリーズは3シリーズより低くワイドで、リア側の存在感を強調したスタンスになっています。これはS5にはない魅力ですね。
かなり乱暴に言うと、S5「美人」435i「カッコいい」です。S5は女性的・流麗。435iは男性的・筋肉質。もちろん好みですが、私は長く所有するならS5のデザインは飽きにくいと思います。
私見ですが、私なりに注目している項目を考えて、それぞれ10点満点での点数をつけてみました。
| 項目 | S5後期 | 435i GC |
|---|---|---|
| 低回転の力強さ | 9.5 | 9.0 |
| エンジンの滑らかさ | 9.0 | 10 |
| エンジンの官能性 | 9.0 | 9.5 |
| ミッションのダイレクト感 | 9.5 | 8.5 |
| 加速力 | 9.5 | 9.5 |
| 高速安定性 | 10 | 9.0 |
| ワインディング | 8.8 | 9.5 |
| FRらしい楽しさ | 7.0 | 10 |
| 乗り心地 | 9.0 | 8.5 |
| 静粛性 | 9.5 | 9.0 |
| スタイリング | 9.8 | 9.5 |
| 高級感 | 9.5 | 8.8 |
| GT性能 | 10 | 9.5 |
一言でいうと、435iは「運転して楽しい」、S5は「所有して、走らせて、眺めて楽しい」という表現がぴったりかと思います。
新車時本体価格は435iGCはおよそ800万円、S5SBは900万円と超高級車ですが、現在の中古車市場では200万円前後で購入可能です。扱いやすいサイズに関わらず荷物もたくさん乗せられ、抜群の走行性能を誇る車両ですので、満足度は非常に高いものと思います。
一粒で何度も美味しいお買い得車を見つけて、是非有意義なカーライフをお過ごしください。


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