「輸入車でオープンカー」、超オシャレで憧れるけれども、維持が大変、、、そんなイメージがあると思います。今回はその中でも乗り心地も良く、ブランドイメージも高い”メルセデスベンツCクラス・カブリオレ”をご紹介します。W205系Cクラスをオープンカーにしたモデルで、2016年に本格導入されました。セダンの派生ではなく、クーペ(C205)をベースに専用設計された2+2ソフトトップのモデルで、上質な乗り心地と開放感を両立しています。
1. デザインと車体構成(外観・素材・剛性)
- 外観:フロントはブランドのアイコンである大口径のスリーポインテッドスターが目立ちます!個人的には、リアからの丸みを帯びたシルエットが上品かつ本当にカッコいいと思います。全体のシルエットもクーペ由来のスタイリッシュなかんじですね。
- ボディ構成:軽量化と剛性確保のためにアルミニウムや高張力鋼板が多用されていますが、ルーフを持たない分、補強用のフレームやフロア補強が入り、車重は同等のセダンより若干重くなります。この重さは、悪いことばかりではなく、重厚な乗り心地にも繋がっています。


2. エンジン/駆動系
C180カブリオレスポーツ・・・1.6L直噴ターボ。特筆すべきは、最大トルク発生回転数が1,200回転からとなっているところでしょう(25.5kg•m)。1.6Lという低排気量をカバーするように、実使用域でのトルク、出力に振っている「ダウンサイジングターボ」の特徴です。一方で、最高出力は156馬力ですから、高速領域でのさらなる「伸び」は控えめです。オープンモデルですから、「気持ち良く流すドライブ」には必要十分なエンジンと言えます。
C300カブリオレスポーツ・・・2L直噴ターボ。こちらも1,300回転という低回転から最大トルクを発生。しかも、そのトルクは37.7kg /mという分厚いもの。最高出力も245馬力ありますので、アグレッシブな運転にも応えてくれる仕様になっています。1クラス上のEクラスに搭載されているエンジンと同型の274エンジンですが、トルク・出力ともにこちらの方が力強いセッティングとなっています。小さなボディにハイスペックなエンジンと、大変魅力的なモデルです。しかも、新車時価格は2016年販売の車体価格でC180が606万円に対し、こちらのC300は768万円と、160万円も高いにも関わらず、中古車相場では両者ほぼ同等と、お買い得感は高いです。ただし、2016年モデルのみでカタログ落ちしているため、探すのには苦労しそうです。
どちらも9速オートマ「9G-TRONIC」を搭載し、エンジン出力を効率的にタイヤに伝えてくれます。またFR駆動方式であることに加え、ベンツならではの旋回性の良さから、取り回しは非常に優れているモデルです。
3. 内装・快適装備(4シーター、気になる後部座席の居住性は?)
- 内装質感:レザー、ウッド/アルミトリム、大型ディスプレイ(COMAND/MBUX系)など、ベンツらしい高級感が保たれます。シートはセミバケットのような形で前席のホールド性が良く、シートヒーター/ベンチレーション、ヘッドレストエアスカーフ(首元暖房)など冬のオープン走行に配慮した装備も用意されます。
- 後席:残念ながら、成人が長時間快適に座れる広さとは言いづらいです。短時間や小柄な女性や子供であれば、ある程度の時間はいけそうです。
4. ルーフ(電動ソフトトップ)の特徴と実用性/トラブル傾向
- 動作:電動で開閉し、一般的に走行中でも50 km/h以下であれば操作可能です。所要時間は約20秒前後で、信号待ちでも開閉可能です。
- 収納とトランク:トランク容量は、ルーフ閉で約335–360L、ルーフ開放時は200L台のようです。後部座席へのトランクスルーができますが、FRであることと、ソフトトップの収納スペースの関係で深さが取れず、ゴルフバックは1本まで、と考えた方が良いでしょう。細めの軽量モデルや、後部座席も駆使して、2本積めるかどうか際どいところです。

- 故障・不具合:電動機構や配線、ロック機構(フロントキャッチ、ラッチ)、トルク伝達のロープ/アクチュエータの摩耗、CAN通信のトラブルなどの書き込みが多いです。症状としては「途中で止まる」「ラッチが閉まらない/開かない」「トランクリッドが開かない」等。ただでさえ日本の気候が想定されていないつくりのため、屋外保管や塩害地域ではシーリングや金属部の腐食にも注意が必要です。原因や症状により幅はありますが、屋根系トラブルは修理費が高額になりがちです。大まかに集計すると、・軽症:5〜15万円・よくある修理:20〜40万円・重症:50〜80万円・最悪:100万円超、こんなイメージを持っておくと良いと思います。
5. 実用性(荷室・燃費・乗員快適性)
- 荷室:上で述べたように、クローズ時は実用域(300L前後)ありますが、オープン時の容量低下は大きいです。日常使いで買い物や週末の荷物には概ね対応しますが、大きなトランクケースを使用する場合は事前のチェックをお勧めします。ゴルフバックは先述の通りトランクに1つ、後部座席を使ってもう一つ、といった感じです。
- 燃費:欧州車はカタログ通りに走ってくれるイメージですが、こちらも同様です。走行環境によって差は出ますが、均してみるとC180で13~4km/lくらい走っているようです。C300についてはあまり情報がないのですが、C180より1〜2km/lくらい劣るのかと思います。また、オープンカーということでボディの重みやオープン走行時の空気抵抗などでセダンなどに比べると1km/lくらい不利になります。
- 乗員快適性:前席は高品質で長距離も快適です。後席は補助的と考えた方が良いでしょう。純粋な“快適オープン巡航”を求めるユーザーには向きますが、後席や積載を重視する使い方には不向きです。
6. 維持費(ランニングコスト)について
A. オイル交換(メンテナンス)
- エンジンオイルは排気量の割に容量が大きく、どちらのグレードについてもフィルターまで換えると7L近く入ります。欧州車用ACEA規格のオイルだと2,000円/L前後かと思いますので、1回当たり2万円弱になると思います。欧州車用ACEA規格のオイルはロングライフを謳っており、年間走行距離1万キロくらいであれば、年一回の交換で十分とされます。ですが、短距離走行を繰り返すなど、日本独特の使用環境であれば、個人的には5~7,000キロでの交換をお勧めします。特にこちらはロングストロークエンジンですので、シリンダーの負担を考えると、オイル環境は整えておきたいところです。
B. タイヤ・ブレーキ・消耗品
- タイヤ:扁平タイヤであることと、低回転トルクが太いことから消耗は「早め」と考えて間違い無いです。タイヤ自体の特性によって寿命、金額に幅があります。安く済ませるにはアジアンタイヤも選択肢の一つとして考えても良さそうです。最近のアジアンタイヤは、ドイツ車への使用もよく見られます。FRのため前後共、あまり差がなく摩耗しますが、前後のサイズが異なるため、通常のローテーションはできません。
- ブレーキパッド/ローター:交換費用はパッドだけで数万円、欧州車はローターも減るため、パッド交換2回に1回はローターも。使い方や運転の特性によって様々ですが、純正で3〜5万キロ、低ダストパッドなど社外品で5〜7万キロでの交換が目安となります。一般的な整備工場であれば、4輪交換で10万円前後が目安となります。
C. 車検・税金
- 自動車税:C180は1,001cc〜1,500ccのため34,500円、C300は1,501cc〜2,000ccのため39,500円となります。かつてのCクラスには3,000cc級のものも多くありましたので、ダウンサイジングングターボの恩恵はここにも出てきます。
- 車検:先述にもあるように、カブリオレは「車両重量が大きくなる」ことが挙げられます。車両重量が維持費にもたらす影響は、「燃費」と「自動車重量税」です。燃費については5.実用性について で触れましたので、ここでは車検時に法定費用として支払う「自動車重量税」について検証します。「自動車重量税」の金額は、車両重量500kgごとに設定されており、Cクラスカブリオレは1,710~1,730kgと、1.5t~2.0tの枠に入ります。対象としてCクラスクーペを挙げると、1,630kgと、同じ枠に入ることから、「自動車重量税」に関するデメリットは「ない」と言えます。
7. コストを抑えるために
- 屋根機構・シールの入念チェック:試乗時に開閉を複数回確認、シールのヒビ・水漏れの跡を確認します。綺麗に清掃されているケースもありますので、これだけで安心、というわけではありません。
- 保証付の車両を選ぶ:どの車両においても基本的なことですが、こちらの車両は特に、屋根の開閉などを一時凌ぎで補修されている場合、購入早期での高額出費に見舞われてしまいます。
- 輸入車専門のリーズナブルな整備工場を探す:正規店での整備は安心感がありますが、どうしも高額になります。一般的に、整備工場は規模が小さければ小さいほど安くなります。一方で、設備の問題から、「できないこと」も増えてしまいます。特にこのCクラスカブリオレは特異な整備技術が必要な車両です。しっかりとこの車両を整備でき、かつ小規模で独立系の整備工場を見つけることが必要です。多少移動距離は長くとも、特化型で信頼できる整備工場を見つけられるといいですね。
- 消耗品は適宜社外品へ切替検討:特にブレーキパッド、ローターはお勧めです。タイヤも使用用途や求める性能(耐久性、グリップ、静粛性など)の優先順位によっては、アジアンタイヤの使用も選択肢の一つです。
- 低走行距離車両を選ぶ:特にカブリオレについては、ボディ剛性に注意したい車両のため、走行距離が短い方が安心です。また、タイヤの減り方も注意ポイントで、不自然な片減りをしている車両は避けましょう。
- 保管環境:こちらも特にカブリオレについては屋内保管や屋根付き保管車両を選びたいところです。浴びる紫外線の量が幌の劣化に大きく影響します。また、開閉部の部品についても同様です。
8. 総評
このCクラスカブリオレは、上質な「オープンでの爽快なクルージング」を重視し、前席中心の2人乗りで週末に楽しみたい人には最適な車両のうちの一つと言えるでしょう。ブランド力・内外装の質感を重視する人にも十分納得いただけると思います。
ただし、圧倒的なスポーツ走行を望む方や、後部座席の使用頻度が高い型、ベビーカーや大きいトランクケースなども積み込みたい、という方には不向きと言えます。
ベンツブランドを所有できながら、ダウンサイジングターボによる維持費の軽減から、所有しやすい車両になっています。
ベンツのオープンカー、もし興味があれば一度いかがですか?上質で爽快なクルージングを楽しんで、是非有意義なカーライフをお過ごしください。






コメント